The Greatest Diva in the World, Keiko Fuji
偉大なディーバ、藤圭子
私は演歌はあまり好きではない。というより昔から肌が合わず寄せ付けない。私は自分のことをどんなものに対しても最初から拒否せずに理解しようとする性格だと自負?している。が、テレビを見ていて演歌が始まるとすぐにチャンネルを変えてしまう。如何ともしがたいことだ。それは育った音楽環境によるものなのかもしれない。私が日本の歌謡曲、中でも演歌をはじめてちゃんと聞いたのは、もう10代も後半になってからだったように思う。現在では、いくつかの演歌については、酔ったときなどに興に乗ってカラオケで歌ったりするまでになってはいるが。
ところで、藤圭子の歌はそんな歌の分類や範疇などは完全に超越した世界である。他の演歌歌手が歌う歌とは全く異なる響きと起源を持った異次元の世界のものである。彼女の歌う歌であれば、例えそれがど演歌であっても、25時間ぶっ通しで聞いていても飽きないし、心安らかな気持ちにさせてくれる。それだけその声とソウルフルな歌いまわしの生み出す情感は奇跡に近い力を持っている。
私は、藤圭子はかって存在した世界中のDivaの中でも頂点に位置する1人だと思う。
岩手県一関市出身。本名阿部純子。幼い頃から浪曲歌手の父・阿部壮(つよし)、三味線瞽女の母・竹山澄子(2010年に死去。享年80)の門付に同行。旅回りの生活を送り、自らも歌った。旭川市立神居中学校卒業。勉強好きで成績優秀だったが、貧しい生活を支えるために、高校進学を断念。17歳の時に岩見沢で行われた雪祭り歌謡大会のステージで歌う姿がレコード会社の関係者の目に留まり、上京。(Wikipediaより)
沖縄や奄美の民謡、朝鮮半島のパンソリ(판소리)、モンゴルのホーミー、アイリッシュなどのケルト音楽、東欧やアラブの民族音楽など、古い源流を持つ音楽には聴く者の心を揺さぶる響きがある。最近インターネットラジオを聞いていてたまたま発見したBebe Rexhaに強く惹かれたのも、彼女の歌の中に彼女の先祖の地アルバニアの響きを感じ取ったからかもしれない。
そして、藤圭子の声には戦後高度成長期と学生運動の嵐をくぐり抜けた1970年代の東京の異様なテンションの高ぶりが感じられる一方で、それらの民族音楽と同質の原初的な響きが潜んでおり、その絶妙な融合がわれわれの心を揺さぶり続けているようである。彼女の才能には彼女の持って生まれたDNAとともにその生まれと境涯も大きく影響を与えていると思う。
そして、そのDNAは当然のこととしてHikkiに引き継がれている。あまり論じられてはいないようだが、Hikkiの歌声の中には間違いなく同じ形質が流れている。
上から順に
●デビュー曲『新宿の女』 学生運動の嵐が過ぎ去った新宿に響き渡ったディープヴォイス
●『アカシアの雨がやむとき』 昭和45年10月 渋谷公会堂 デビュー直後の歌声
●『みだれ髪』 演歌も彼女が歌うと別世界が広がる
●『さすらい』
●『ネリカンブルース』
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